第83回新制作展開催のご挨拶 委員長 藤原郁三

委員長挨拶 lightpink絵画部風景

83回展委員長_藤原郁三
魅力ある新制作に
委員長
藤原郁三

1936年に若き9名の画家達によって新制作派協会(現在の新制作協会)が設立されました。その図録第一号に創立会員一人一人の想いが語られています。
その中で、猪熊弦一郎は、「思い至れば、アカデミズムの伏魔殿から逃れて、新しき我等の時代に出發し得た新制作派協會の一員として、今後自分の仕事を愛すると同時に衷心から會をも愛し度い」と述べています。
この言葉には、新制作の在野の精神をつらぬく強い決意が現れています。それに何より、作品あっての展覧会という団体展本来の有り方を見事に言い当てています。しかもそれを「愛する」という言葉で表しているのが、いかにも猪熊弦一郎らしいと思いました。
私がかつて新作家賞を頂いた時、たまたま猪熊弦一郎氏から直接手渡されました。初めての氏との対面でしたが、その時、やさしさあふれる、柔和な目で「良かったですね。これからもがんばって下さい。」と声をかけられ、とても感激したことを思い出しました。新制作展に出品して良かったと思えた瞬間でした。
今は作家への登竜門が多様化し、団体展の存続意義が問われている時代ですが、私は公募団体展は日本ならではの文化だと思っています。作家同士が切磋琢磨し、高め合う場でもあります。そして新しい次の作家を発掘し育てる場でもあります。日本のアートは団体展によって支えられてきたといっても過言ではありません。
唯、どうしても作家が作家を審査する仕組みである以上、そこに権威主義が生まれ易くなる傾向があり、それが団体展が問われる要因の一つになっていると思います。でも新制作は、創立会員の意思を受け継ぎ、今でも在野の精神が貫かれています。権威主義を廃し、自由な雰囲気にあふれているのです。
問題は展覧会の中身です。何より作家自身が作品を愛し、展覧会の質を高める努力をすれば、自ずから会の存続意義も高まろうというものです。
新制作は、創立以来時代の変化の中で紆余曲折はありましたが、そういう伝統だけは保ち続けています。「愛」にあふれた団体なのです。 83回展も魅力的な展覧会になるよう努力していきますので、多くの皆様のご来場をお待ちしています。

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