「第77回新制作展・地方展の記録」掲載しました
委員長挨拶
新制作展は今年第77回展を迎えます。1936年に9名の画家が結成を声明し新制作派協会を創立して以来、1945年を除く毎年、新制作協会展や新制作展の名称で公募美術展覧会を開催してきました。協会創立時は油絵部でスタートしましたが、第4回展で彫刻部が創設され、さらに第13回展からは建築部も加えられました。そこには3部が共存することで総合美術団体としての確固たる基盤を築こうという創立会員の決意があったと思います。その後3部は創立の精神を忘れず情熱と敬意をもって協調し前進を続け、日本の現代美術に少なからず影響を与えてきました。現在の新制作協会は絵画・彫刻・スペースデザインの3部門で構成されています。
私はリベラリズムと平等の精神を堅持している新制作協会に尊敬の念を抱いています。それは、権威を持たない純粋さと透明性を大切にしている清々しさを感ずるからです。さらに3部の公平性を理解する懐の深さにも敬意を覚えます。
公募美術団体の存在は日本特有ですが、長年に渡り作品発表の場を提供してきた意義は大きく、多くの作家の活躍をみても、文化の形成とその発展に重要な役割を果たしてきたといえるはずです。もちろんどの団体でもやはり一人ひとりが純粋に美術やデザインを愛する気持ちを持って真摯に自己を見つめ、切磋琢磨を繰り返して更なる向上を探求する、という意欲が根底になければならないことですが、その個人が固い意志と協調性のもとに結集すれば、必ずや大きな力となって高品位な展覧会を展開できるものと信じています。これは創立時の理念に込められた強いきずなを保ち続けることでもあると思います。
新制作協会は伝統を尊重しつつも未来に向かう鮮度の高い姿勢を追い求めています。また、存在意義においても運動体という大義名分はもはや通用しないことを自覚し、広く社会に向けた発信力の増強を視野に活動を続けています。
応募をお考えの皆さまには、個性のぶつかり合いで互いに刺激を受け、それを糧に次へと進む形が自然体でとれる経験を味わって欲しいです。展示の制約でどうしても厳しい審査になる場合もありますが、ぜひとも果敢に挑戦して頂きたいと思っています。また、各部門の会場とも気持ちの良い空気感の中に、見応えのある力作が並びますので、今年の第77回展もどうぞご期待頂きたいと存じます。
第77回展 委員長 谷 浩二