<作者から>
最近、乾漆で彫刻を作り続けている。
強くて温かく、艶やかに胎を守り続ける漆は、過去と今と未来を繋ぐ一種のタイムカプセルのようだ。
この素材に、用具としてではなく彫刻としての可能性を夢見ている。
作品名を“ひとり”とした。
“ひとり”とは私であり、またあなたである。社会の最小単位。
ひとりの個が地に立つことを見つめ直したかった。
人の姿を借りることなく、漆に姿を託し形にしたものである。
構造体である内部の合板は、強く外に膨張しようとしている。
一方で、漆の布は、せり出そうとする合板を包み込んでいる。
相反する拮抗とそれに伴うささやかな緊張。
私はこの緊張に彫刻のことばを聴く。 |