第81回展の記録

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81回展委員長_石松豊秋
-新鮮なる造形を-

 

創立80周年の節目を終え、新制作協会は新たな気概を持って進み始めました。

 新制作協会は、情熱ある若き9名の画家が1936年に結成し、1939年に彫刻部、1949年には建築部(現在のスペースデザイン部)が参加し、総合美術団体として日本の芸術文化に大きな刺激を与えて来ました。
会員諸氏は、創立精神に敬意を持ち、前進し続けています。

 発足時の協会規約の綱目のひとつに、「純粋芸術の責任ある行為に於いて新芸術の確立を期す」とあります。この言葉は時代を越え、強い意志として受け継がれています。
しかし、組織、集団であるが故に、色褪せる宿命を背負わなければなりません。
 80年の年月は、日本の芸術文化、社会と生活環境変化の流れの中で諸問題も多く生み出しました。会員諸氏の新旧の変化、作家の減少など多々ありますが、その時代の中で、質の高い作品が多く見受けられるのは、新制作の精神である権威を持たず、すべてが平等である、といった空気から生まれたものであると考えます。自由で、新鮮な造形を求めることは、その時代に生きていることに繋がります。

 芸術文化は古今、美術、文学、音楽と時代の中で響き合って現代に至っています。
 異なった表現方法で共存し、発信されたものが現代社会にどのように位置付けされ、受け入れられているのか、その現在位置を確かめ、自己を見出さなければなりません。

 能学者の世阿弥の花伝書の中に、芸術が生まれるというのは、「能を演じる者と、観る側との中間に芸術は生まれる」とあります。演者が芸術ではなく、観る側が居て初めて芸術が生まれ、作品として扱われるのです。観者に感動を与え、魅力ある作品に出会えれば自ずと観者も多く生まれます。

 環境が人を育てます。新制作は、その年ごとに将来を期待される作家を生み出しています。
 公募美術団体である新制作は、作品発表の戦場でもあります。お互いに刺激を受け合い、次の作品発表に生かす「何か」を生み出す原動力と環境を得る場でもあります。

 若い力で日本の芸術文化を支配する社会、システムそのものを転換させる意欲が現代には必要ではないかと私は感じています。
 一緒に考えて見ませんか。

委員長 石松 豊秋

 

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